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銃器工具痕鑑定の非科学性を主張する元FBI研究室長の宣誓供述書(40)  [鑑定批判]

(19) 誤鑑定の教訓が生かされない現体制 承前

 過去の鑑定や裁判例がフィードバックされない理由の一つは、個々の事件における証拠の正確性を決定する総合的で意味のある研究がなされていないことで、一般的な誤鑑定率すらわからないことにある。銃器がかかわる事件の多くは、犯人と被害者との距離が離れていることから、(強姦などの接触犯罪と比較して)犯人から被害者へのDNAの付着が生じにくい。したがって、科学的に正確性が確認されているDNA型証拠と比較することで、証拠の正確性を確認することができない。第二の理由として、司法制度そのものが、誤った鑑定を発見しにくくするシステムとなっていることが挙げられる。個体識別の鑑定結果が誤りであることは、まったくの偶然に発見される以外、発見される手立ては存在しない。工具痕鑑定で、その鑑定結果が誤りであることを検証する別の鑑定法は存在しない。鑑定人が行う個体識別の手続きを科学的に信頼できる手法で検証することができないことから、誤鑑定率が低いという主張には根拠がない。

 様々な検査手法や検査手続きを混同して分析していたのでは、「鑑定技能検定」とか「有効性の確認研究」といわれるものも、誤った手法で行われ、あるいは誤った結論が導かれている。法科学鑑定で行われる「鑑定技能検定」は、特定の鑑定人の鑑定作業の正確性と信頼性を決定することができるに過ぎない。「有効性の確認研究」を行うには、実施する検査に用いられる仮定や理論が正しいのか誤っているのかを見極めることのできような、科学的手法に基づいた科学的方法論を厳格に適用することが求められる。種々の検査法や研究テーマの後ろに「有効性の確認研究」という表題を付けたからといって、そのような研究が行われたことを意味しない。
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銃器工具痕鑑定の非科学性を主張する元FBI研究室長の宣誓供述書(39) [鑑定批判]

(19) 誤鑑定の教訓が生かされない現体制 承前


 法廷は鑑定室ではありえず、「時間をかければ明らかにできる」として行われる、工具痕鑑定の証言の妥当性とその結論の受容性について時間をかけて尋問をおこなっても、実際の鑑定の有効性を検証したり誤鑑定率を明らかにすることはできない。情報源が一方的であり、鑑定人の証言の正当性を検証する方法が存在しないからである。NASの最新の委員会報告書には、以下のような記述がある。

 「鑑定人が裁判に出廷すれば、その証言は法廷で同業者が厳密に検証し、弁護人から詳細な尋問を受けることから、その真偽は常に検証可能であると法科学界では長年みなされてきた。法科学者は、時として職場で誤鑑定を犯すであろう。ただ、法廷における厳しい反対尋問に晒されることで、その誤りは明らかにされると考えられてきたのである。ところが、この厳しいとされる反対尋問は、まったく不十分なものに過ぎない。

 双方の力がバランスしている民事裁判とは異なり、刑事裁判での被告側の反対尋問はおざなりなことが多い。法科学の中で鑑定手法の根拠が最も希薄な毛髪顕微鏡観察、歯形痕の識別、筆跡鑑定ですら、法廷で反撃されることはあってもる、その特定の事件での証言の事実検証が法廷で行われずに、以前から認められていた鑑定手法であることを根拠に、その鑑定を受容できるものと裁判所は認めてしまうのである。弁護士も、適切な証人を立てたり、新たなデーターを提出することができずに終わることが多い。弁護側がドーバート基準による異議申し立てをしようにも、必要とされる知識や技量を欠いており、またそれを行う経済的裏付けもないことから、異議申し立てをあきらめざるを得ないのである。

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銃器工具痕鑑定の非科学性を主張する元FBI研究室長の宣誓供述書(38) [鑑定批判]

(19) 誤鑑定の教訓が生かされない現体制 承前

 工具痕の由来物を特定した鑑定結果が誤りであっても、それは様々な理由から明らかとならない。第1の理由として、AFTEの閉鎖性が挙げられる。AFTEのような閉鎖集団内の論文査読では、他の学問分野の観点からの批判が弱い。たとえば、少なくとも1620年から社会心理学や研究方法論の分野では認知されていた「先入観に基づく誤り」について分かる人がいない。先入観に基づく誤りについては多くの研究者によって論じられている。たとえば「特に法科学は人間の知覚で判断することが多く、通常の科学手法に基づく手法が用いられない分野であることから、先入観に基づく誤りが発生しやすい」といった見解がある。多くの研究者によって明らかにされている先入観に基づく誤りは、初めからある想定や信念に反する事実が目に入らなくなることによって発生する。銃器工具痕鑑定のように、主観的な判断を行っている分野では、先入観に基づく誤りには、最も気を付けなければならない。スペインの列車爆破テロ事件の捜査において発生したブランドン・メイフィールド事件は、この先入観に基づく誤りが発生した好事例である。この事件では、経験豊富で、指紋鑑定分野で高名な複数の指紋鑑定者が(弁護側の鑑定人1名までもが)、この種の誤りに陥ってしまった。そして、最初の鑑定を確かめた鑑定までもが誤った結論を導いたのだ。弁護側の鑑定者までが、捜査側鑑定を追認したことは、(以前の鑑定が正しいだろうという)期待に基づく判断の誤りは、鑑定者の個別の先入観による誤りよりも強いものと考えられる。ブランドン・メイフィールド事件は、同様のパターン認識による鑑定を行っている銃器工具痕鑑定において、決して無縁のものではない。
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銃器工具痕鑑定の非科学性を主張する元FBI研究室長の宣誓供述書(37) [鑑定批判]

(19) 誤鑑定の教訓が生かされない現体制

   工具痕鑑定者が工具痕の由来物を特定した結論には、それが有効であることを示す裏付けがない。なぜならば、鑑定手法が主観的であり、その結論に科学的根拠がなく、結論を有効にフィードバックする体制もないからである。鑑定者は通常、研究結果やデータの裏付けなしに主観的な結論を導き、鑑定書を書き、そして、しばしばその内容を裁判で証言する。その後、研究所に戻って別の鑑定をする。ブランドン・メイフィールド事件のような、ごくまれな例外事件を除くと、鑑定者の意見や証言が本当に正しいのかを決定する体制はなく、そのため鑑定のエラーレイトは不明なままである。したがって、一致しないものを一致したとする空振り鑑定(フォールス・ポジティブ)が発生する割合は分かっておらず、このことについては、以下に詳しく紹介することにしよう。
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銃器工具痕鑑定の非科学性を主張する元FBI研究室長の宣誓供述書(36) [鑑定批判]

(18) 鑑定者の結論の偏り 承前

 法科学鑑定者が陥りやすい別の偏りに、状況に依存した偏りがある。その例は、平均して16年の鑑定実務経験を積んだベテラン指紋鑑定者を対象とした研究に示されている。その研究では、被験者に対して、すでに鑑定を行ったことのある指紋をブラインド試験の形で改めて検査させたものである。その際、被験者に対して客観的判断を揺るがせるような架空の事件情報を資料とともに示した。被験者は、そのような事件情報は一切無視して、指紋にのみ集中して鑑定を行うように指示された。ところがこの研究結果では、80%の再鑑定結果が架空の事件情報の影響を受け、以前行った鑑定とは異なる結論となった。

 このドロール(Dror)の行った研究のもう一つの結論は、過去の鑑定と一貫した結論をすべての場合で導いたのは、受験者のわずか1/3であったということである。パターン認識の観点から、指紋の隆線の特徴は7種類に分類できて、その幾何形状は、意味のない線条痕の組み合わせである工具痕と比較して単純でかつ記憶しやすいものである。ドロールの研究の研究者たちは、事件情報を与えずに再検査しても、指紋の特徴点に挙げる箇所が異なっていたことを指摘している。(工具痕や指紋の比較において)少なくとも主観的な評価が行われていることが推定でき、事件情報が与えられなくても、時間を置いて行う鑑定の結果と以前に行った鑑定の結果とが一致しないことが示された、と結論している。
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銃器工具痕鑑定の非科学性を主張する元FBI研究室長の宣誓供述書(35) [鑑定批判]

(18) 鑑定者の結論の偏り

 鑑定手法が完成したように見える現在でも、鑑定者の結論には種々の偏りが含まれている。偏りとは、客観的あるいは平等であるべき判断に、特定の見方が影響を与えてしまうことである。鑑定に際する偏りの一つに、期待に伴う偏りがある。弾丸や薬きょうに付けられた工具痕の比較資料として、大半の事件で容疑銃器は1丁しか提出されない。鑑定者がそれらの痕跡を調べて、ひとたび「一致」の結論を出してしまうと、それ以外の銃器の痕跡を調べようとはしないだろう。今調べた銃より、もっと類似した痕跡を付ける銃器があるかもしれないのに、である。このような検査法は、何人かの人物を並べて、その中に犯人がいるかどうかを目撃者に調べさせる際に、目撃者に容疑者を一人だけしか見せずに判断を迫るようなものである。鑑定者は、捜査員が持ってきた銃器は、「間違いないもの」であり、捜査員は、ただそのことを確認してもらいたいだけなのだ、と期待するようになる。事実私が調べた多くの事件で、「ヴィンセント・マッコイが逮捕されたことで、この事件は解決した」、といったようなコメント付きで資料が提示されていた。捜査員が「真犯人」を挙げているのだから、鑑定資料でそれを確認していほしいだけでなのだ、と鑑定者に信じ込ませるような状況が作られていた。鑑定資料を法科学研究所に提出する手続きも、法科学研究所がその資料を受理する手続きも、鑑定結果が肯定的になることを期待させる偏りに満ちたものとなっている。さらに付け加えると、銃器工具痕鑑定の現実のエラーレイトが小さなものとなっている最大の要因は、警察の捜査がほとんどの場合で的確であることにある。
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銃器工具痕鑑定の非科学性を主張する元FBI研究室長の宣誓供述書(34) [鑑定批判]

 (17) きわめて類似性の高い痕跡の近隣地域での出現

  個々の工具が、それ固有の痕跡を残すという固有性の仮定は科学的に確立されておらず、この固有性の仮定は科学界と法科学界から誤りとされている。また、同時期に製造された製品がどのような地域に流通しているかについて信頼できるデーターもない。製造された銃器が米国内に均一に分布するように販売されることはありそうにない。そうではなく、鉛弾丸の研究者が明らかにしたように、同時期に同様な製造手法で製造された銃器は、特定の地域に固まって流通するのではなかろうか。弾丸や薬きょうに付けられる発射痕の一致状況を評価する上で、特定の型式の銃器の販路を考慮する必要がある。さらには口径が同一の類似した型式の銃器が特定の地域にどれだけあるかも考慮する必要があるだろう。銃器・工具痕鑑定者は、類似痕跡から、それらの痕跡が同一物に由来するものと結論した場合に、その結論の確率的価値を明らかにしたことはなく、その確率を考慮したことすらない。文献を徹底的に調査したところ、その確率的価値を求める上で、銃器の販路を調べたものは一切なかった。彼らがそのようなことを調べない理由は、それぞれの銃器が固有の痕跡を(弾丸や薬きょうに)残すという検証されていない仮定を信じ切っているからであろう。 鉛弾丸の成分分析の鑑定をしてきた人たちも、ほぼ40年間にわたって、鉛弾丸の成分の固有性を信じ切っていた。それは最近の研究によって有効な仮定ではなく、鑑定結果は誤解を招くものであり、法科学的に意味をなさないことが明らかとなったが、それまで彼らはそう信じていたのである。
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銃器工具痕鑑定の非科学性を主張する元FBI研究室長の宣誓供述書(33) [鑑定批判]

(16) 偶然に一致する確率:全米科学アカデミーの見解

 すでに述べたように、NRCのバリスティック・イメージング報告書では、工具痕に固有性があるという仮定は科学的に証明されていないと述べられている。報告書ではさらに、「最新の技術を使用するようになって、さらに訓練や経験が集積したとしても、工具痕鑑定者が論理的でない基準に基づいた主観的な判断を行っているという現状に変化は生じないないだろうし、鑑定のエラーレイトの統計的推定値も明らかにならないだろう」と述べている。繰り返しとなるが、「工具痕の固有性を確率的に定量化するためには、相当多くの研究を行う必要がある」とも述べられている。工具痕の固有性が科学的に確立され、あるいは認められたとしても、工具痕の由来物を特定した結論の確からしさの確率統計的評価を行う次のステップが残されている。そこでは、偶然に痕跡が「一致する」確率が推定できなければならない。その解析には、次のような2ステップが必要となる。:(1)その鑑定結果が、二つの工具痕が共通のものに由来する場合に得られる確率の推定(反復性の推定)、(2)その鑑定結果が、二つの工具痕が異なるものに由来する場合に得られる確率の推定(固有性の推定)。これら2つの問題に対する有効な回答なしでは、鑑定結果の確実性を明らかにすることはできない。AFTEの文献には、これらの問題に対する回答を示したものは存在しない。銃器鑑定者は、「一致」結論の確実性の証明なしに、絶対的に正しい結論であるとの主張を続けている。リベラ(Rivera)による偶然の発見によって、同じ会社が製造した同一口径の異なる銃器で、容疑者が購入した地域と近い場所に出荷された銃器の中には、容疑者の銃器の痕跡ときわめて類似性の高い痕跡を残すものがあることが明らかとなっている。現在では使用されなくなった鑑定法である鉛弾丸の成分分析法(CBLA)を我々が研究した際に、「地理的クラスター」と呼ばれる出荷地域による類似性の出現は、論理的にも確認され、経験的にも驚くほど高い出現率であった。
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銃器工具痕鑑定の非科学性を主張する元FBI研究室長の宣誓供述書(32) [鑑定批判]

 (15) 固有痕比較の信頼性

 本件の鑑定で痕跡の固有性の根拠とされたものは、(私が見ることのできた鑑定メモから判断すると)弾丸と薬きょうを検査して、撃針痕、閉塞壁痕、抽筒子痕と、あるいは蹴子痕を組み合わせた痕跡の類似性であろう。ところが、これらの痕跡は準型式特徴が現れやすく、信頼性の低い痕跡であるというのが工具痕鑑定者の間での一致した見解となっている。この点については、以下に説明する。高名な工具痕研究家が「準型式特徴を言い当てることが難しいことが、これまでほとんど議論されてこなかった。」と述べている。

 撃針痕、蹴子痕、抽筒子痕と閉塞壁痕が痕跡の出所の結論をする際の根拠として弱い理由は以下に挙げるものである。
 ●撃針、蹴子と抽筒子を製造する際に、それらの狭い表面に付けられる特徴はごくわずかな量に過ぎない。
 ●銃器の耐用年数の間で再現性の良好な痕跡と一般的に考えられているものに、閉塞壁痕、蹴子痕、抽筒子痕があるが、銃器の閉塞壁面と薬きょう底面の間に作用する力は圧縮力であり、蹴子痕や抽筒子痕と薬きょうとの間に作用する力も圧縮力である。
 ●閉塞壁面、抽筒子と蹴子の製造加工法は、準型式特徴が現れやすい手法である。
 ●撃針痕の製造手法も限られたものしかない。

 著名な工具痕鑑定家は、論文の一つで「旋盤で加工された撃針痕に残される同心円状の工具痕は、複数の撃針の間できわめて類似性が高かった。したがって、銃器工具痕鑑定者は、発射銃器の特定を行う場合に、その種の痕跡に頼ることができないことに注意されたい」と述べている。

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銃器工具痕鑑定の非科学性を主張する元FBI研究室長の宣誓供述書(31) [鑑定批判]

  (13) 銃器工具鑑定の主観性 承前

 大きな問題ではないとして見逃されてしまいそうな点に、個々の線条痕の特徴に対する評価がきわめて主観的であることが挙げられる。線条痕の特徴は極めて重要であるのだが、その評価は難しく、これまで主観的に評価されてきた。線条痕を記述するパラメーターとして科学的に受け入れられるものは存在せず、工具痕鑑定者らは定量的でない漠然とした言葉で線条痕を特徴づけてきた。本件とは別の被告人に対する裁判で、ある工具痕鑑定者は線条痕の一致について次のように説明した。「1、2本の線条痕が対応しているだけでは痕跡一致の結論には不足であるが、個々の線条痕に特徴があるならば、そして、それらの対応条痕の特徴がそれほど違わないのであれば・・・」。金属・材料科学者の視点からは、線条痕に「特徴」や「模様」があるという主張はばかげているとしか言いようがない。それらの特徴は、見た者にしか分からない主観的な内容である。その特徴の記述は定量化できず、再現すること(別の時期に全く同じ言葉で特徴を記述すること)も難しい。同僚から検証を受けることはできるが、その記述を反証することは難しいであろう。したがって、その特徴記述は科学的手法の条件を満たしていない。
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